範囲の広いダイナミックな守備と、ショートとしてはまあまあの打撃を誇り、入団以降ドラゴンズを支えてきた京田。開幕から低打率にあえぎ、二軍落ちやベンチスタートも経験しているが、打撃技術が衰えてしまったのだろうか?セイバーメトリクスから考えてみる。
Contents
今季のBABIP
まず、今期のBABIPを求めてみる。
.198と、全打者の平均値からはかなり低い値となっている。
2022/06/29現在、京田の打席数は121でセリーグ全打者中52位であるが、その中で最下位のBABIPである(BABIPが低い場合、安打を含む指標、長打率や出塁率も低下するはずなのでそういった選手は使われなくなるという生存バイアスもあるとは思われる)。
よく勘違いされがちだが、打者のBABIPは各選手が同じような値(三割付近)に収束するわけではない。一例を挙げれば、日本時代のイチローの通算BABIPは.363である。
つまり、この今季BABIP.198という値だけでは、本人のこれまでのシーズンと比べてどうこうとは言えないのである。もしかしたら京田は基本的にBABIPが低い打者という可能性も否定できない。なので比較対象として入団以来のBABIPがどうなっているのかを算出し、それとあわせて考えてみる必要がある。
昨季までのBABIP
入団以降2017年からの京田のBABIPの推移と通算を求めた。
どうやら、.300程度の平均的なBABIPを期待できる選手のようだ。年度による大きな上下動もなく、比較的安定した値が導き出された。
ここまででわかること
- 2017年 ~ 2021年の京田の平均BABIPは約.300であり、比較的安定している。
- 2022年開幕~6月29日までの京田のBABIPは.198である。
- 両者には、.100程度の大きな乖離がある。
BABIPが例年よりかなり低いということは、今年の京田は、インプレーの打球が偶然にも例年より多くアウトになってしまっているだけで、不調などではなくただ運が悪いだけである…と言いたいところだが、先ほども書いたように、打者の場合のBABIPは本人の能力によっても大きく上下する。技術が落ちて弱い打球しか飛ばなかったりすれば、BABIPも低くなりやすい。なので、他の指標も考えてみなければならない。
BABIP以外の指標
採用したのは以下の指標。本塁打率・三振率・四球率という、いずれも打者本人の能力に強く依存するイベントの、打席または打数における割合。
- AB/HR
1本の本塁打を打つのに必要とした打数。低いほど優秀。 - K%
全打席数のうち、三振した数の割合。低いほど優秀。 - BB%
全打席数のうち、四球を奪った数の割合。高いほど優秀。
赤字が今年。
Deltaによると(MLBデータだが)、AB/HRにおいてはノイズの割合が減ってくる目安として170打席程度が必要らしく、参考程度になってしまうが、K%とBB%は120打席でそこそこ信頼がおけるデータとなるようである。
見ていただくとわかる通り、実は上のどの指標においても過去一番優秀な値を記録している。少なくとも、これらのデータからは打撃技術が落ちているということは読み取れない。ここに至って、ようやくある程度確かな結論のようなものが出せたと言ってよいのではないだろうか。
まとめ
- 今年の京田は、例年より1割程度も低いBABIPとなっている。
- また、他の指標からは、打撃技術が落ちているようなところは特に見られない。むしろ例年より優秀かもしれない。
以上より、導き出される結論として、
今季の京田の打撃不振の主要因は、ただの「不運」の可能性が高い。
と言える。言い換えれば、このまま使っていれば、そのうち例年くらいの成績には戻ってくるのでは?という感じか。
今年は、同ポジションの三ツ俣や溝脇も頑張っているので、休養も入れつつで固定はしなくてもいいと思うが、守備も併せて考えれば、やはり京田メインで使っていくのが一番いいのではないだろうか。
後書き
もしかしたら、オフに取り組んでいた中村ノリコーチの打撃フォーム指導が実は効いていて、フォームが戻ってもそれが指標の良化として表れているのでは?とも思ったが、まだ打席が少なくて確かなことは言いづらい。ここからの京田の打撃成績の推移にも注視したい。
データはスポーツナビからお借りしました。
コメント